2004年12月10日版

 「この女性(ひと)に学びたい」の第1回目は、アートを基軸に、鋭い視点と生活者サイドに立った“地域
活性化プロジェクト”を全国で展開し続けていらっしゃる、橋本敏子さんにお話を伺いたいと思います。

<VOL.1> アートによる地域活性プロジェクトリーダー

株式会社 生活環境文化研究所 所長
龍谷大学社会学部 教授
   橋本 敏子さん

  

〓Interview〓

まず、どのような経緯で、今のこの“アートを活用した地域の人々によるまちづくり”という、橋本さん独自の分野を確立なさるに至ったのでしょうか?
私自身、学生時代からアーティストを志したいという強い気持ちを実は持っていたんですよ。けれども、26歳の時にワシントンDCの『ナショナル・アート・ギャラリー』で、ルイーズ・ニーヴェルスンを観たことがきっかけで自分の限界を感じ、「自分自身がアーティストとして作品を創るより、社会に対してどのようにアートを活かしていくかというポジションに立つべきだ」と考えるようになったのです。
当時は、建築事務所で仕事をしていて、機能中心であり“人”という問題が見えていない現実を知り、“使い手の立場としてのソフト”から、建築や都市、まちづくりに関わっていきたいという思いが大きくなり、それを実現化させるために独立を決心し、現在に至っています。
具体的には、“アート”をどのように活かして地域参加型のプロジェクトを育てていらっしゃるのでしょうか?
当初は、「アートは創り手と使い手の“Bridge”=橋渡し」という位置付けをしていましたが、それが徐々に「アートは創造的環境を創りだしたりコミュニティを創るための“Engine”」であると・・・。つまり、社会の様々な問題を自分達の手で解決していくための、力を出す源となるのがアートである、という考えに変化していきました。
そして現在は、「アートはコミュニケーションを誘発していくシステム」であり、パソコンのシステムのように“Version−Up”していくものである、と考えるようになりました。
そのように考える大きなきっかけ、転機となったのが阪神淡路大震災の頃でした。あの"生活必需品"を何よりも優先する極限のなかで、アートを“エネルギー=力”と地域の人々が感じ、アートの展示会を自分達で創り上げ、その展示会に地域の多くの人々が長蛇の列で参加してくれたことは、アートに対する私の考え方に大きな影響を与えました。
そのような“システムとしてのアート”を活用して、全国でいろいろなプロジェクトを手掛けてこられましたが、なかでも、昨年(平成15年)、大阪の湊町再開発に先駆けてプロデュースなさった『湊町アンダーグラウンドプロジェクト』は、非常に大きな反響を呼びましたね。
はい。今まで手がけたアートプロジェクトのなかでは、最も難易度の高いものでしたが、多分野の専門家が参加くださったり、若い人たちがものすごい知恵と粘りを発揮して実現できました。何しろ、実現は不可能といわれていた地下空間をアートで拓くという試みだったので。その後、参加したメンバーが新たな試みにトライし始めているなどの広がりが出てきているのがとても嬉しいです。
この他、今、個人として、あるいは事務所として、どのような活動、プロジェクトに興味をもって取り組んでおられますか?
ここ数年、力をいれてきたのが「海辺・みなと」関係と「公園づくり」など地域の大規模な社会インフラの活用計画や管理運営プログラムの開発です。プランの作成やコンサルだけでなく、地域に入りそこに暮らす人たち一緒に、あるいは行政や関連企業、学校、大学といった異なる分野の組織を繋ぎながら、持続可能なマネージメントプログラムのコーディネートをしています。
個人的には、やはりアートが大好きなので、そうしたプロジェクトの活性剤として滑り込ませる試みをいつも考えています。あと2年くらいしたらまた面白いことをお見せできるかもしれません。
大津市にある橋本さんのご実家は、関係者の間でも有名で、築三百数十年の素晴らしい日本家屋です。あのようなお宅で培われたご自身の美意識が、現在の仕事に影響を及ぼしているように感じていますが...
週末にここに帰ると、ほっとします。たくさんの友人・知人が遊びにきてくださり、気持ちいいといってくださるのがとても嬉しいです。掃除がたいへんですが・・・。出来るだけ活用しながら守ってゆきたいと思っています。
若い世代に、一言お願い致します。
若い方々に申し上げたいのは、「問題意識を持って、人生なり、仕事なり、物事に取り組んでいただきたい」ということです。
“女性の視点”ということについては、私自身あまりこだわって考えていません。20数年来"Trans-gendar"という立場を持ってきましたので、敢えて“ジェンダー論”を戦わせるつもりもありません。ただ、私の年代ではあまりにも優秀な女性の能力が活かされてこなかったのを実際に見てきましたから、「やる気のある女性たちに、彼女たちの能力を活かすことの出来る場を!」という想いはありますね。
若い方には、個々の人間としての“価値観”を持って欲しいですね。
本日は、お忙しいところ貴重なお時間をいただき本当に有難うございました。

◆橋本敏子さんの プロフィール ◆

同志社大学文学部文化史学科卒業後、大手広告代理店・建築設計事務所勤務後独立。現在、利用者・生活者の目で都市空間・文化施設・文化政策などの調査・研究を行うシンクタンク株式会社生活環境文化研究所所長。現代美術を中心とする創造活動のための環境づくりと支援活動を行う「文化農場」の主催者でもある。著書に、『地域の力とアートエネルギー』(学陽書房)、共著に『都市のたくらみ・都市の愉しみ』(日本放送出版協会)、『みどりのコミュニティデザイン』(学芸出版・共著)、『社会とアートのえんむすび」(トランスアート社・共著)。『暴力とカスタマイズ』(南芦屋浜コミュニティ&アートプロジェクト)などがある。


橋本敏子さん率いる生活環境文化研究所とその詳しい活動内容については、以下のサイトで見ることができます。
http://www.skb.ne.jp


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